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タイで会計担当者を雇うときに確認すると良い3つのポイント


タイの会計業務

タイの会計担当者とは


 日系企業がタイで事業を営む際、自社の財務書類の作成に責任を負うのが会計担当者です。タイでは事業の大小に寄らず公認会計士による会計監査を受けなければいけない仕組ですし、会計担当者は通常税務申告も並行して行うところ、税務申告のエラーがあると罰金等が発生し直接の金銭的ダメージが事業に生ずることになりますので、会計担当者はとても重要な役割と言えます。


 そこで本稿ではタイで会計担当者を雇うときに、自社にとって良い会計担当者を雇うために確認すると良い3つのポイントについて解説します。


① 自社で実施予定の業務と過去の業務経験との整合性があるか


 会計担当者は自社の財務書類に責任を負う事になりますので、当然に会計・税務に関する広範な知識が求められます。また、自社の事業特有の会計処理もあるでしょうから、事業に関する知識も求められるでしょう。さらに言えば、会計担当者に財務書類の作成だけでなく、経営管理も依頼する予定なのであれば、それも全く別のスキルセットとして必要です。この点、『会計をやってきました』と言っても、過去の業務経験が当然にこれらを満たすわけではないことに留意が必要です。


 例えば、『過去の業務経験は売掛金だけ(広範な知識がない可能性)』『製造業の経理担当者志望だが、サービス業の経験しかない(対応可能事業のミスマッチ)』『予算管理をやったことがない(経営管理はできない可能性)』等といった候補者は、先述のケースで求められる人材として十分ではない可能性があります。過去の業務として何をやってきたのかについて、詳細に確認する必要があります。


② 海外との取引に関する知見があるか


 タイの会計経験者といっても、一定数国内取引にしか関与したことがないという人材がいます。この場合、日系企業のように海外との取引を頻繁に行う企業の会計担当者として会計・税務業務に従事すると、未経験の取引が多く混乱するケースがあるようです。


 例えば、『日本円建て取引をどう処理してよいかわからない(タイ中央銀行の規定レートで換算する必要がある)』『物流はタイ国内だが、商流が輸出取引になる取引のVATを課税しない(この場合、国内取引としてVATの課税対象になる)』『海外へのコンサルティング料支払いについては、なんでもロイヤリティとして15%源泉徴収しようとする(源泉が必要か否かは、取引ごとの検討が必要)』という状況が良く見受けられます。


③ 退職歴がある場合、その理由は何か


 タイの労働市場は日本に比べて流動的で、会計人材市場もその例に漏れません。このため、日本に比べて一社における職歴が短かったり、複数回の退職歴がある人材は珍しくありませんし、それ自体が誤りなわけでもありません。他方、その理由については可能な限り詳しく聞きましょう。


 例えば、『上司と意見が合わなかったから(その意見齟齬は合理的か?)』『職場環境が悪かったから(どういう意味?例えば労働時間が長くなる場合があったから、ということであれば、同様な状況は発生しないか?)』『同じことだけやっていたかったから(会計人材でしばしばみられる理由。新しいことをアサインできない可能性?)』といったケースが見られます。特にその理由が自社でも発生しうる理由である場合、それがまた退職する理由にもなりかねませんので、十分注意しましょう。


どうすればよいのか?


 上記からわかるように、社内で会計担当者を採用するのは一定のリスクがあります。もちろんその会計担当者が社内に長く残ってくれれば知識の蓄積や、自社特有業務に卓越した人材の確保ができるという意味で有用である一方、彼らが辞めてしまっては元も子もありません。これらのリスクを受容して社内で会計業務を行うかというのは自社で考えるべき判断になります。一部の業務を外注したり、必要に応じて外部の専門家の意見を聞く、というのも有効な策になりえるでしょう。本稿が皆様がタイでビジネスをする上での一助となれば幸いです。 

[1]なぜタイ人は簡単に会社を辞めてしまうのか? (2023) TJRI https://tjri.org/the-reasons-for-thais-resignation/ 


【免責事項】

本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。


 

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